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技術解説

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ミニチュア・小径ボールベアリング -6. 定格荷重と寿命

JIS等の軸受関連規格による設計・材料を用い、高い品質で製造した軸受については、JIS、ISO等の規格を適用して定格荷重、定格寿命の計算が出来ます。

転がり玉軸受の寿命について

転がり玉軸受に要求される寿命は、機器の使用目的や要求内容の違いにより大きく異なります。これは機器の使用方法は多岐にわたり、何を寿命とするのかの「尺度」が異なるためです。従って、使用目的や要求内容を考慮した適切な寿命設定が必要となります。
寿命のとらえ方として定格寿命、音響寿命、潤滑寿命、機能寿命等があります。
音響寿命は設定した騒音レベルを超えるまで、潤滑寿命は潤滑剤の劣化により潤滑性能を失うまで、機能寿命は回転数や振れ等が設定を超える等、設定機能を満足出来なくなるまでのことを言います。
ここではJIS B 1518で規定されている「単列深溝玉軸受」の「定格寿命」「修正定格寿命」について概要の説明をします。「定格寿命」とは基本動ラジアル定格荷重に基づく寿命の予測値となります。
「修正定格寿命」とは90%及びそれを超える信頼度、疲労限荷重、潤滑剤の汚染、特別な運転条件のいずれか又は組み合せに対して修正した定格寿命となります。

基本動ラジアル定格荷重 Cr

「軸受が100万回転の基本定格寿命に理論上耐えるような、一定静止ラジアル荷重」と定義されています。JIS B 1518に計算法が示されています。基本動ラジアル定格荷重は寸法表に記載してあります。

動等価ラジアル荷重 Pr

「実際の荷重条件の下で達成する軸受けの寿命と同じ寿命が得られるような、軸受にかかる一定の静止ラジアル荷重」と定義されています。次式および下表よりラジアル荷重・アキシアル荷重の合成荷重を静止ラジアル荷重に置き換えます。

Pr=XFr+YFa

X,Y : 下表より求める。
Fr  : ラジアル荷重(N)
Fa  : アキシアル荷重(N)

アキシアル荷重比

Fa
ZDw2
e

Fa
Fr

≦ e

Fa
Fr

> e

(N) X Y X Y
0.172
0.345
0.689
1.03
1.38
2.07
3.45
5.17
6.89
0.19
0.22
0.26
0.28
0.30
0.34
0.38
0.42
0.44
1 0 0.56 2.30
1.99
1.71
1.55
1.45
1.31
1.15
1.04
1.00

Z  :玉の数
Dw:玉の直径(mm)
注1:表に示されていないX、Y、eの値は一次補間法によって求めます。

注2:単列軸受けの計算式とするので、JISで規定するアキシアル荷重比を求める式より列数の変数を除いてあります。

基本定格寿命 L10

「通常使用条件において、信頼度が90%のときの定格寿命」と定義されています。これは「一群の同じ軸受を同じ条件で運転したときに、そのうちの90%の軸受が材料の剥離を起こさずに回転できる総回転数」となります。

JIS B 1518に基づき、以下の式から求めます。

L10 :基本定格寿命(106回転)
Cr  :基本動ラジアル定格荷重(N)
Pr  :動等価ラジアル荷重(N)

一定回転数の場合は、通常は時間で表わすことが多く、基本定格寿命と寿命時間の間には次の関係があります。

L10:時間(h)
n  :回転数(min-1

修正定格寿命 Lnm

運転状態が良好で、一定の条件を越えなければ、基本定格寿命に比べて非常に長い寿命が得られることが知られています。良好でない運転状態では、寿命が短くなります。JIS B1518:2013では軸受寿命に影響を及ぼす各要因の変動及び相互作用を考慮した修正定格寿命を定義しています。
破損確率n%の修正定格寿命は以下の式で表されます。

Lnm=a1 aiso L10

a1  : 信頼度係数
aiso  : 寿命修正係数
L10   : 基本定格寿命

信頼度係数 a1

信頼度90%から99.95%までの係数があります。
下表に記載します。

信頼度(%) Lnm a1
90
95
96
97
98
99
99.2
99.4
99.6
99.8
99.9
99.92
99.94
99.95
L10m
L5m
L4m
L3m
L2m
L1m
L0.8m
L0.6m
L0.4m
L0.2m
L0.1m
L0.08m
L0.06m
L0.05m
1
0.64
0.55
0.47
0.37
0.25
0.22
0.19
0.16
0.12
0.093
0.087
0.080
0.077

寿命修正係数 aiso

疲労限荷重、汚染係数、粘度比等により導き出される係数です。

で表されます。

疲労限荷重 cu

軌道の最大荷重接触部で疲労限応力となる軸受にかかる荷重です。(疲労限応力とは、軸受材料に疲れが生じない最大応力)

汚染係数ecの指標
汚染レベル ec
極めて高い清浄度
高い清浄度
標準清浄度
軽度の汚染状態
普通の汚染状態
重度の汚染状態
極度の汚染状態
1
0.8~0.6
0.6~0.5
0.5~0.3
0.3~0.1
0.1~0
0
汚染係数 ec

潤滑剤が固体粒子で汚染され、粒子が軌道と転動体との間に入りこむと、軌道に圧こんが生じる場合があります。これらの圧こんにおいては、局部的に応力が増加して、転がり軸受の寿命低下につながります。この寿命低下を考慮する係数です。指標として、JIS B 1518:2013に載っているものを右に抜粋します。

粘度比 K

潤滑剤の転がり接触表面の分離状態を表し、実際の運転温度における油の動粘度と基準動粘度との比です。

注:修正定格寿命の計算においては、諸々の制約が加わること、また、ミネチュアサイズ軸受への適用の妥当性についての懸念もあります。機器の設計・使用用途・使用環境等多数の要因が絡んでくる複雑な条件確認が必要な事もあるので、計算結果の妥当性については、充分な知見、検証を持って考えるようにして下さい。

転がり玉軸受の基本静ラジアル定格荷重及び静等価ラジアル荷重については、JIS B 1519「転がり玉軸受の静定格荷重の計算方法」に規定されています。

基本静ラジアル定格荷重 Cor

「最大荷重を受けている玉と軌道との接触中央における計算接触応力が、4200MPaになる静荷重」と定義されており、この接触応力により生じる玉と軌道の総永久変形量は、玉の直径のおよそ0.0001倍となります。基本静ラジアル定格荷重は寸法表に記載してあります。

静等価ラジアル荷重 Por

静等価ラジアル荷重とは「実際の荷重条件下で生じる接触応力と同じ接触応力を、最大荷重を受けている玉と軌道との接触部中央に生じさせる静ラジアル荷重」と定義されています。
次式から求めた大きいほうの値を取ります。

Por=XoFr+YoFa
Por=Fr

Xo,Yo:JIS B 1519より
深溝玉軸受の係数 Xo=0.6
Yo=0.5
Fr:ラジアル荷重(N)
Fa:アキシアル荷重(N)

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